[PR]子育てママさんへ:3年毎に15万円うけとれる医療保険?






そして、忘れていく


「ふ・・・・あぁっ・・・・・」
闇の、中。
月明かりに照らされ、仰け反る肢体を、武骨な指が撫でて行く。
「平気か・・・・・?」
「るせっ・・・・・・っ」
気遣う声を、うるさいとはねつけて。自ら発したその声が響いて、身体をこわばらせる。寝転がったまま動きを止めていた男は、軽くため息をつくと身を起こした。
「ひあっ・・・・・・・・!ば、馬鹿っ・・・・・」
「馬鹿はどっちだ、この馬鹿」
問答無用で、汗ばんだしなやかな肢体をベッドへと入れ替わりに横たえる。
「息吐いて・・・・・力抜け」
「やぁ・・・・・・・・」
「やじゃねえだろ、ほら」
小刻みに息を吐いて、言われたとおりに身体を弛緩させると、それまでの圧迫感と痛みが少し和らいだ。それを見計らって、ゆっくりと体内を圧迫していた存在が抜きとられ、その瞬間のずるりとした感触に身を震わせる。
「だーから、まだ駄目だっつったろーが」
あきれたような、声。しかし叱り付けるような雰囲気は欠片も、なく。
「こら・・・・・・キャロ」
返事もしない相手に焦れたように、名前を呼べば。
「るせーよ」
拗ねたように顔をそむけて、身体を丸めた。



「何かあったのか」
ベッドサイドのテーブルに、小さく灯るランプ。暖かで柔らかな光が、壁のほうを向いて背中を向け、丸まってシーツに包まる小さな背中を照らしている。その横で、背中を眺めつつ煙草をくわえていたガトーは、もうひとつ小さなため息をついた。
こんな夜中にいきなりやってきて、問答無用で抱けという。こんなことは初めてではなかったし、自分達の関係も今更だが。
だけど時々こうやって、夜中に荒んだ目をしやってくる理由・・・・・が。
「夢を見る・・・・・・・・」
「夢ぇ?」
華奢な背中はぽつりと、呟いて。小さく震えたような気がした。



いつからなのか、時々見る夢がある。
闇の中、何かに追われてずっと走り続けている。追いかけてくるのは、暗く、禍々しい気配・・・・・血の匂いさえまとって。どんなに息が切れるまではしり続けても、それは追いかけてくるのだ。
だけど次第に追いつかれ、腕を脚を身体を爪をかけられてもぎ取られて、そして、気付く。
追いかけてきたのは自分だったと。
そんな夢を、時々見る・・・・・・。



「・・・・・・受け入れてるつもりなんだけどよ」
自分の中に潜む、「存在」。それが何者で、どんな運命を持っているのか。わかっているつもりだった、受け入れているつもりでもいた。自分はどんな時にも大丈夫だと、自信過剰に思ってもいる。だけど。
心のどこかで不安なのだろうか。どこかで存在を恐れて、いるのだろうか。
「・・・・・なるほどな」
頷いてやって、吸い込んだ紫煙を吐き出す。
キャロットは、自分の弱みを(本当の意味での弱みを)弟や幼馴染達に見せることを嫌う。それは自分が弱いことを自覚しているのとは違う。譲れない一線なのだ。
だからこうして、時々真夜中に。荒んだ目をしてドアを叩くのだろう。そんな心を、弟や幼馴染達には見せられなくて。
「いんじゃねーの」
「あん?」
「恐いもんは恐い。嫌なもんは嫌、不安なもんは不安だ、で・・・・・いんじゃねーの?」
無理に受け入れる必要など、ないではないか。恐くていいのだ、不安でも構わない。世界を滅ぼすほどの存在を、その身に息づかせているのだから。
「・・・・・簡単に言うんじゃねーよ」
ふん、とキャロットが再びそっぽを向く。面白そうにガトーが、煙草をもみ消し、手を伸ばした。
「・・・・・・んだよ」
「続き」
「・・・・・って」
ひっくり返されて、ガトーの方を勢い向いてしまったキャロットが、慌てた顔をする。
「なんだよ、やりに来たんだろ?」
ニヤニヤと面白そうに笑みを浮かべながら、先ほどの半端な熱はとうに冷めてしまった、夜気に冷えた身体を抱き寄せる。
「ちょ・・・・・っと、待てって」
「いーんだよ、お前は余計なこと考えなくても」
「・・・・・・・」
そのほうがお前らしい。囁きながらのくちづけを、受け入れた。
「あ・・・・・・う」
何時もながらの愛撫が、今日はやけに丁寧で優しい。
こうやって。口ではからかいながらも、さりげなく慰めて甘やかしてくれるから。だから、どうしてもマロン達に見せられない心はここに持ってきてしまう。
忘れさせてやるからと。余計な暗い想いは、持たなくていいからと。すべる指先が、唇が、無言のままに伝えてくる。
「ば・・・かぁ・・・・・・!」
言葉とは裏腹に素直な身体を開かせながら、先ほどは十分与えてやれなかった愛撫を与えて拵えをしていく。
行為を、性急に求めてくるのは、性急に忘れたいものが、あるからだ。こうやって抱きあっているうちは、夢は追いかけてこない。暗い、闇の夢は。
「ンな夢は、忘れていいぜ・・・・・?」
どうやっても、逃げられる運命ではないのだから、この一時は。
「俺のことだけ、考えてろ・・・・・・ああ、違うな」
「ふあ、あぅ・・・・・・・・・・・・んっ」
「全部・・・・・忘れろよ」
闇の夢も、現実も、過去も未来も。頭の中に詰まっている余計なものは全て。そして真っ白になればいい。
「あ、ああっ!!」
囁きと共に貫かれ、揺さぶられて。残っていた意識も快楽に流され。いつか忘れていく、闇の夢を。何もかもを。
震えながら伸ばされたキャロットの指が、ガトーの大きな手に指に絡められ、そして握りこんでくる。離せない、放したくない、力強い手。・・・・・・・・そう、
「キャロ」
このときばかりは真摯に呼んでくれる、耳元の低い声が。いくばくかの甘さを、含んでいる限りは・・・・・。



<END>




BACK HOME 作品解説



[PR]空いた時間に副収入GET:簡単作業!在宅ワークで副収入