悪戯の行方


「おい……放せってば、ガトー!」
「うるさい」
「…………」
 必死の抗議を、一言の元に却下されて、キャロットが憮然とした表情をする。 『泣かしてやるから、ちょっと来い』と言われ、半分引きずられるようにして、ガトーの部屋に連れてこられた。
 ぐいっ、とガトーが軽く力をいれると、それだけで華奢なキャロットの体は、簡単にソファーの上に投げ出されてしまう。
「あにすんだよっ」
「…………」
むっとした表情で、自分を見下ろすガトーを見上げるのだが、ガトーの方が遥かに不機嫌な顔をしているので、キャロットは言葉に詰まった。
「なんだよ……、そんなに怒ることねーだろ? 冗談じゃねえか」
ちょっとした悪戯、のつもりだった。ここまでガトーが不機嫌になるなんて、予想外である。
「……悪かったよ」
緊迫した雰囲気がどうにも耐えられなくて、明後日の方向を向いてキャロットが謝罪を口にする。……しかし、何だか面白くない。第一、普段から自分をからかうガトーに、ちょっとだけ仕返ししようというのが、今回の悪戯の動機なのだ。
 ガトーの手がキャロットの顎を捕らえ、自分の方を向かせる。キャロットが一瞬、驚いたような、脅えたような表情を見せた。
「本当に、悪いと思ってんのか?」
「だから、悪かったって言ってるだろ?」
「反省してないな」
さすがにそこまでしつこく言われると、キャロットの方もむっとくる。
「いいかげんにしろよ! ……帰る!」
キャロットが勢い良く立ち上がる。脇を擦り抜けようとするのを、ガトーが腕を伸ばして、腰を捕まえた。ひょい、と体が簡単に浮く。
「わっ……」
そのまま、もう一度ソファーに戻される。キャロットが抗議の声を上げようとした瞬間、ガトーが性急な動きでキャロットの唇をさらう。驚いてキャロットが瞳を見開いたと同時に、背中をソファーに落とされた。
「う……んっ……ん…」
唇を、歯列を割られ、侵入してくる舌に口中を愛撫され、舌を絡め取られて吸い上げられる。激しいくちづけは長く続き、キャロットをほぼ酸欠状態にしてからようやく開放した。開放された唇が、酸素を求めて息を弾ませる。
 急な事に反応の鈍いキャロットのタンクトップを、ガトーが引き剥す。驚いて起き上がろうとする肩をソファーに押し付け、首筋に噛み付くようにくちづける。
「やだっ……、ガトー! やめろよ!」
叫んで、ガトーの肩を押し返そうとする。
 何度か、コトに及んだ事はある。だが、こんな訳の分からない強引さは嫌だ。
 抵抗するキャロットの、二の腕を捕まえ、胸を開かせて、ガトーが更に唇を落とす。びくっ、とキャロットが躰を震わせた。
 唇が舌が、キャロットの薄い胸を愛撫していく。段々とキャロットの息が弾んで、顔が紅潮してくるのを、ガトーがちらりと盗み見た。
「や……だっ……あっ」
胸の突起を舌で転がされ、キャロットが躰をよじる。瞳に涙がにじんできていた。
「なん……で」
「言っただろ?」
ガトーの言葉には、一切の容赦がない。
「泣かせてやるから、来い……ってな」
「あっ……!」
胸の突起に歯をたてられ、キャロットが眉を寄せる。二の腕を押さえ込まれているので、ガトーの躰を押し返すことが出来ない。ガトーの腕に軽く爪をたてるくらいが精一杯だ。
 ガトーが、唇の端だけで笑う。
「可愛い抵抗だな」
「やめ……ろよ……もう……っ」
ガトーの愛撫に身を震わせながら、キャロットが哀願に近い声を出す。瞳ににじんでいた涙は、丸く結晶して頬をこぼれ落ちる。
 ガトーの唇が、その涙を吸い上げる。息を弾ませている唇に軽く、優しいくちづけをしたかと思うと、キャロットの躰を返した。うつぶせにされ、両腕を背中に回されて、引き剥されたタンクトップで手首を拘束される。
「なっ……何を……!」
「今日は、泣いたって許さん」
言うなり、背中にくちづける。右腕をキャロットの躰とソファーの間に潜り込ませ、胸の突起を探り当てる……と同時に、左腕がベルトを緩め、そのまま中へと滑り込んでくる。
「や……ああ……っ」
キャロットが身悶える。微妙で巧みな指の動きが、キャロットを追い詰めていく。ガトーの舌が、キャロットの背中をたどっていく。
「あっ……ああ……や……はっ……」
「派手に喘ぐと、外に聞こえるぞ」
耳に舌をはわせながら、ガトーがささやく。何時もの寝室なら奥の部屋だから気にすることはないが、ソファーのある部屋のドアは直接廊下につながっているのだ。
「ふっ……うう……んあっ」
素直に声を抑えようとしてみるが、ガトーの指に強い刺激を与えられ、反射的に声が出てしまう。
 ぐいっ、と躰を起こされて、仰向けに戻される。間をおかずに、すべての着衣を引き剥され、キャロットは身を縮めた。左足を、ソファーの背もたれに乗せられ、右足を床に落とされる。
「やっ……」
強引に開かされた両脚の間に、ガトーが頭を埋める。先に指で玩ばれていた華芯は既に熱を持ち、軽く張り詰め始めている。ガトーはそれを舌の先で湿らせて、やがて口中へと導き入れた。
「んっ……ふ……はあっ……」
ガトーの舌の動きに、キャロットが泣きながら首を振る。ガトーはそんなキャロットの様子にはお構いなく、性急にキャロットを追い詰めていく。
「やあっ……ああ……」
開放を前に、ガトーが愛撫を中断する。
 息を弾ませたまま、キャロットが脱力してぐったりとなる。それでも、ガトーの腕から開放されたのを知り、開かされていた躰を縮める。背中で拘束された両腕が痛んだ。
 その腕を掴まれ、強引に引き起こされた。キャロットが痛みに顔を歪める。ソファーに座ったガトーの足をまたぐようにして、膝の上に座らせられる。
 息を弾ませてうつむいているキャロットの、顎をガトーの指がすくう。キャロットがゆっくりと瞳を開いた。
 細い躰を抱き寄せて、うなじに耳に、頬に唇にくちづける。先ほどまでの乱暴さが、まるで嘘のような優しい動きで、キャロットの華奢な躰を撫で上げ、華芯を愛撫する。
「う……んんっ……んくっ……」
唇を塞がれ、舌を絡め取られながら、全身に施される愛撫にキャロットが身悶える。唇が放されても恍惚とした表情のキャロットの唇を、ガトーの指がたどった。キャロットがぎこちなく、ガトーの指を舌でたどる。人差し指と中指が、その舌の動きに合わせて口中に入り込み、軟らかな部分をたどった。
 やがて適当に濡れた所で、指を引き抜き、もう一度唇で塞ぐ。濡れた指はそのままに、キャロットの背後に回されて、双丘の奥の莟を探り当てる。キャロットがびくっ、と躰を跳ね上げた。その躰をしっかりと抱き寄せ、莟への愛撫に専念する。
「あ……はあ……っ……あっ」
指の動きに、キャロットが躰を震わせる。頭をガトーの肩に乗せて、キャロットが荒い息を吐く。
 揉み解されて、硬い莟が少しづつほころんでくる。愛撫の中断に熱を失いかけていた華芯が、内壁への愛撫に前立線を刺激され、逆に張り詰めていく。
「……力抜け」
耳に歯を立てながら、ガトーがささやく。熱い息がかかり、キャロットが身を震わせる。
 二人の間でジッパーの音がして、ややあってキャロットの腰を、ガトーが両手で抱き上げる。
「んっ……くう……んっ……!」
ゆっくりと……、キャロットの体内に灼熱の剣が収められる。何度かの行為で痛みは馴らされたが、圧迫感は変わらない。
「ああっ……やっ……」
奥深くまで貫かれ、キャロットが首を振った。涙が数滴、頬をこぼれ落ちていく。ガトーの手が、キャロットの細い腰のラインを確かめるように撫で回し、やがてキャロットの躰を上下に揺らす。
「んっ……あああっ」
「声を、抑えろ」
「む……り言うなっ……ああっ」
ガトーの膝の上で、キャロットの躰がのたうつ。喘ぎ続ける唇を、ガトーが塞いだ。
 その時だった。……不意に、ガトーが廊下に足音を聞き付けたのは。




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